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アップセット鍛造について

鍛冶屋の豆知識 ―オリジナル用語集―

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鍛冶屋の豆知識 ―オリジナル用語集―

この用語集は鍛造関連専門書を“参考”にはしておりますが、基本的には
(株)ミヤジマ 社長 宮嶋誠一郎の浅学にもとづいた“オリジナル解説”となっております。

もし疑問点や誤りがございましたら、お手数ですが『お問合わせ』のページからご指摘
いただきますようお願いいたします。

加工について 材料について 単位について 比重について 検査について 豆知識

加工について

アプセット鍛造(あぷせっとたんぞう)とは?
upset forging:鍛造の工法のひとつで、材料を軸方向につぶして高さを低くし、直径(断面積)を大きくする成形方法です。この時のメタルフローは玉ネギを縦に切った時のような模様になっています。
お釈迦(おしゃか)とは?
よく不良品をつくってしまうことを「お釈迦をつくる」とか「お釈迦にする」と言うことがあります。なぜ尊いお釈迦様を「不良品」呼ばわりするのでしょうか?これは「鋳造」の世界から来ているという説があります。仏像は銅などの金属を溶かして型に流し込んでつくる、いわゆる「鋳造」でつくられることが多いのですが、大日如来や阿弥陀如来などの仏像には、背後に「光背(こうはい)」といって放射状の光や火焔をかたどった飾りがつけられます。しかしこの複雑な形状に溶けた金属をうまく流し込むことは意外に難しく、しばしば綺麗な形に仕上がらず不良品となり、結局は「光背」のない仏像本体だけのものが出来あがってしまいます。その姿が「お釈迦様」のようなので「お釈迦をつくる」といわれるようになったのだそうです。
削り出し(けずりだし)とは?
ゴルフのパターに「削り出し品」といって非常に高価な品物がありますが、要はごっつい金属の塊から旋盤やマシニングセンタという機械でゴリゴリ削って作った品物のことです。如何にも“高級品”というイメージがありますが、ものづくりの世界においては「削り出し」ほど勿体ないものはありません。地球の貴重な金属資源をたくさん使い(材料屋さんとスクラップ屋さんは喜びますが)、長い時間と手間をかけて削ってつくるという製造方法は、コストが高くつくことはもちろんですが、環境にも非常によくない製法です。
鍛造(たんぞう)とは?
「金:かねへん」に「段:だん」と書いて「鍛」、すなわち「段違いに強い金属を造る」のが「鍛造」です。その字のごとく「鍛(きた)えて造る」、すなわち金属を叩いて(もしくは高い圧力をかけて)成形することで、金属内部の組織が緻密になり、硬くて折れにくい、強い組織ができます。その代表選手が日本刀です。よく「ちゅうぞう(鋳造)」と読み間違えられるのですが、まったく違う作り方ですので、このサイトをご覧いただいた方は今後絶対に読み間違えされませんようお願いいたしますm(_ _)m
鍛造三悪(たんぞうさんあく)とは?
鍛造品において、絶対にあってはならない3つの不良のことで、@異材、Aオーバーヒート、B工程とびのことを言います。Bを「疵(きず)」とする文献もありますが、なぜ特に「鍛造三悪」と呼ぶかの本来の理由が“目で見てわからない致命的な不良”であることを考えると、前者が適切であると考えます。@異材=材質違い→部品本来の強度が出ない→事故につながる、Aオーバーヒート=鍛造しやすいように軟らかくするために焼き過ぎる→組織が粗くなるもしくは溶ける→ボロボロの組織となったり、内部に空洞の欠陥ができる→割れたり折れたりして事故につながる、B工程とび=指定された熱処理などが実施されないままとばされて次工程に流れる→本来の強度が出ない→事故につながる。こういうように「鍛造三悪」は人命を奪ったり会社を潰すほどの事故につながるので一切の妥協は許されず、絶対に避けねばならないものです。
鋳造(ちゅうぞう)とは?
「金:かねへん」に「寿:ことぶき」と書いて「鋳」。大変めでたい名前の金属成形法が「鋳造(ちゅうぞう)」です。鋳造は金属を高温に加熱して“溶かして”型の中に流し込み、冷えて固めて造る工法ですが、古来より仏像やお寺の鐘などはこの工法で造られてきたため「寿」という字が使われたのでしょうか?金属を溶かして流し込んで作るため、強度は鍛造には及ばないものの非常に複雑な形状にも対応でき、また良い音色がしたり、振動を吸収するなどの特徴も持っています。

材料について

鉄(てつ)と鋼(はがね)はどう違うのか?
「鉄」とは英語で「Iron アイアン」、いわゆる元素としての「鉄 Fe」全般を指します。それに対して「鋼(はがね)」は「Steel スチール」といって、「鉄の炭素(カーボン)の合金」のことをいいます。すなわち「炭素鋼(カーボン・スチール)」のことです。鉄に微量の炭素が入ると、すごく強度が増すのです。
なぜ鉄に微量の炭素が入ると強くなるのか?
炭素原子Cは鉄の原子Feよりも小さく、そのスキマに入り込むことができます。そのため鉄の結晶格子(骨組みのようなもの)がぎゅっと詰まって強くなるのです。ただし炭素はあくまでも炭(すみ)ですから、入れすぎると逆に弱くなります。その上限が約2%(2.14%)です。
鋳鉄(ちゅうてつ)とはなにか?
鉄の中に約2%以上の炭素を含むものを鋳鉄といいます。鉄に炭素が入ると強くなりますが、逆に多すぎると弱くなります。炭素Cは炭(すみ)なので燃えやすく、よって炭素を多く含んだ鉄は溶けやすくなります(融点が下がる)。しかしサラサラになるので、複雑な形状でも型に流し込んで造ることができます。鉄に限らず、金属を溶かして固めたものを鋳物(いもの)といいます。
合金(ごうきん)とはなにか?
合金とは、その字のごとく「合わせた金属」です。たとえば銅をベースとして、そこに他の元素を加えたものを銅合金といいます。鋼の場合は、ニッケルやクロムやモリブデンなどを入れることにより、強度や耐食性(錆びにくさ)や耐摩耗性がアップします。合金元素はいわばビタミンのようなものです。合金の中でも超合金といわれるものは、特に高価な元素(ニッケルなど)をたくさん加えて、高いけれどもすごい性能をもっている合金のことで、宇宙航空産業や原子力などに使われます。
鉄の角ブロックの重さを求めるには?
鉄の比重の7.85だけ覚えておけば大丈夫です。すなわち100mm角のブロックの場合なら、タテ×ヨコ×高さ=100×100×100×7.85を電卓で計算してください。ゼロがたくさんついて7,850,000と出ますが、100mm角の鉄のサイコロが78.5kgもあるはずないので、エイヤで7.85kgだとわかります。
鉄の丸棒の重さを一発で求めるには?
丸棒の場合は「6165」という数字を覚えておいてください。そして丸棒の場合は直径を2回かけて、長さをかけ、最後に6165をかければ重さが出ます。たとえば直径50mm(直径の記号はφ(ふぁい)で、φ50と書いて50ファイといいます)、長さ300mmの鉄の棒の重さは50×50×300×6165=4,623,750,000と出てきますが、感覚的に462kgや46.2kgではないとわかりますので、4.62kgだなと判断します。
鉄はどれだけ伸び縮みするか?
これも機械に関する技術屋には必須の合言葉があります。それは「1℃1m10ミクロン(いちど、いちメーター、じゅうミクロン)」という言葉です。意味は「鉄は1℃、1mあたり10ミクロン伸びる」ということです。たとえば電車のレールが長さ20mあって、夏場は70℃、冬場はマイナス5℃までなるとすると、温度差は75℃、長さは20mなので、10ミクロン(0.01mm)×75×20=15mm伸び縮みするということです。ということはレールとレールの継ぎ目を15mmほど空けておかないと夏場にレールがぶつかり合って反り返ってしまいます。しかし15mmもスキマをかけておくと、逆に冬場にはガタコンガタコンの音がうるさくなります。だから鉄道ではレールの保全(メンテナンス)係の方たちが季節に応じてレールのスキマを調整してくださっているのです。

単位について

技術屋が使う長さの単位は?
私たちは生活の中では cm (センチメートル、略してセンチ)をよく使いますが、技術屋の世界ではまず使いません。 mm (ミリメートル、略してミリ)がおよび m (メートル)が基本です。mmのはじめのmはミリで1/1000を表す記号です。また距離を表すのによくつかうkm(キロメートル)の初めのkはキロで1000倍を表す記号です。ですから重さを表すkg(キログラム)も1gの1000倍という意味なのです。技術の世界では、お金の単位と同様に千(3ケタ)単位で数えていきます。これはサイコロの体積はタテ×ヨコ×高さなので、それぞれが10倍になれば10×10×10=1000倍になるため、1000倍単位が基本となっているのだと思います。
1ミクロンとはどういう単位か?
よく精密なものを表す時に「ミクロン単位で」という表現を使いますが、「ミクロン」とは長さの単位です。「1ミクロン」とは記号で「1μm」と書き、正確には「1マイクロメーター」と読みます(長いので通常ミクロンと呼びます)。「μ(マイクロ)」とは10のマイナス6乗(100万分の1)を表す記号で、1mm(1mの1/1000)のさらに1/1000を1μmといいます。すなわち1μm(1ミクロン)は1/1000mm=0.001mmつまり1mmの千分の1の長さをいいます。
キロ単価(きろたんか)とは?
牛肉で「グラム500円」というと、なぜか「100gあたりの単価が500円」という意味をもち、「グラム」=「100g」という常識化がなされていることはすごい!・・・と全然関係ない話ですが、鍛造品でいう「キロ単価」とは、その名の通り「1kgあたりの単価」です。しかし牛肉と鍛造品の大きな違いは、牛肉では「グラム単価」が高いと喜ばれるのですが、鍛造品では「キロ単価」が高いことは“悪”とされることが多いのです(@_@;) これは特に大企業の購買マンの方に多い傾向なのですが、手間ヒマかけて非常に難しい(ある意味高級な)鍛造品を作ると、当然「キロ単価」は高くなるのですが、エクセルで「購入素材キロ単価表」などを作られると「なぜこの品物だけ高いの?他の製品と同レベルにしてください!」という値下げ要求を受けるのです。それならば、わざわざ手間をかけてムダの少ない鍛造品を作らねばよかった・・・となってしまいます。これでは日本のものづくりのレベル低下、マインド低下を招いてしまいます。私たち鍛造メーカは「価値の分かる購買マンさん」が一人でも増えることを願っています。

比重について

比重とはなにか?
比重とは、その字のごとく「重さの比率」のことです。では、何を基準とした比率か?それが「水」です。水の重さを「1」として、その何倍の重さがある物かを表した数値が「比重」です。つまり、比重が「1」よりも小さければ水に浮き、大きければ沈むということです。
鉄(鋼)の比重は?
機械や金属に関係する人は絶対に覚えておかねばならない数値が「7.85」で、これが鋼の比重です。純鉄の比重は7.87ですが、微量の炭素を含んだ鋼では、炭素以外の合金元素の種類と量にもよりますが、概ね「7.85」という数字を用いています。
鉄以外の金属の比重は?
アルミは2.7、チタンは4.5、銅は8.9、銀は10.5、金は19.3です。アルミはざっと鉄の1/3の重さです。金はなんと鉄の2.5倍も重い。逆に軽いのはマグネシウムで、比重が1.7と鉄の1/5くらいしかないわりに強いので、レーシングカーなどに使われています。

検査について

非破壊検査とは?
その名のとおり、「破壊しない検査」です。 これだけだと、「あたりまえやろ!」と怒られそうですので、もう少しご説明しますと、例えば製品の内部欠陥の有無の品質を確認する方法として、製品を真っ二つに切断して内部を見れば一番いいのですが、それではその製品が使えません。よって製品が10個必要な場合、同じ工程で11個作ってその内の1個だけを切断して検査すればいいのですが、それはあくまでも「抜き取り検査」であって全数を保証するものではありません。 そのために「超音波探傷(UT)」という検査方法があります。 これは製品の表面から内部に向けて超音波を発信し、それがどのように反射して返ってくるかを検査する方法です。内部に欠陥があると、そこで超音波が反射して返ってくるので、欠陥のない製品で反射してくる波形とは異なります。(魚群探知機も同じ原理です。船の下に魚がいるかいないかを超音波が返ってくる波形の違いで判断します。お母さんのお腹の中の赤ちゃんを診るのをエコーといいますが、エコーとは超音波のことです。)それで内部欠陥が発見できるのです。ただしこの検査は熟練を要するので「日本非破壊検査協会」という機関の難しい資格試験に合格した人でなければ検査証明書は出せません。 このように、製品を切断など破壊することなく検査する方法を「非破壊検査」といい、上述の「超音波探傷検査(UT)」の他に「磁粉探傷検査(MT)」や「浸透探傷検査(PT)」などがあります。

豆知識

同じ10℃の水と空気、どちらが冷たい?
もちろん、水の方が冷たく感じますよね?どちらも同じ10℃なのに、なぜでしょうか?それは「熱伝導率(熱の伝わりやすさ)」の違いなのです。熱は高い方から低い方へ伝わります。しかし空気の熱伝導率は乾燥した空気で0.024と小さな値であるのに対し、水は0.582と空気の24倍もあります。よって体温(約36℃)が水にサーッと移動するので冷たく感じるのです。ちなみにガラスは0.5〜0.8なので、ほぼ水と同じくらい冷たく感じます。乾燥した木材は0.2前後なので、水やガラスほど冷たさを感じることはありません。
金属に触るとなぜ冷たく感じるのか?
水やガラスとは比べ物にならないのが金属の熱伝導率の大きさです。金属の中を電子が動き回っているので、電子が熱エネルギーを運ぶすなわち熱が伝わりやすいのです。ちなみに鉄の熱伝導率は83.5で水の143倍もあります。だから鉄に肌の熱を奪われて冷たく感じるのです。さらに銅は403、銀は428もあります。よって銅の鍋はすぐにお湯が沸くのです。